テレワークやフレックス等、働き方が多様化する中で、朝礼の在り方や意味が問われるようになってきました。「マンネリ化」「業務連絡だけ」「活気がない」といった課題を抱えることも相まって、昨今では「朝礼=古い、ムダ」といった考えが広まりつつあります。中には、社是・社訓の唱和をするだけでブラック企業扱いされたり、社員から「やる意味があるの?」といった声があがったりするケースも耳にします。
世間のこの流れに対して、イーバリューでは朝礼を重視し、テレワークの場合であっても必ず参加します。理由として、朝礼は現在でも工夫次第で、社員の意識向上に働きかける有効なツールになると考えているからです。私たちの取り組みを通して、社員の意識を変える朝礼の方法を紹介します。
朝礼を重要な場と位置付けるも悩みは同じ
イーバリューでは、以前より朝礼を重要な場として位置づけていました。その理由は、大きく3つあります。
1つ目は、朝の良いスタートを切るための場であることです。仕事を始めるスイッチとなり、全員が一斉にそのスイッチを入れることで組織として一体感が生まれます。2つ目は、社員の朝の表情や姿勢等が、心理的な部分も含めたバロメーターになることです。3つ目は、社是・社訓に触れることで会社の理念や自社らしさを共有する場になることです。
このような理由から重要な場と位置づけていましたが、世間一般の企業同様、マンネリ化や活気がない等の課題はあり、様々な工夫をしながら取り組んでいました。
「クレドブック」を用いた朝礼へ
2018年、「クレドブック」が作られたことをきっかけに、これを用いて朝礼を行うようになりました。イーバリューでは経営理念を表す「クレド(ラテン語で「信条」「志」「約束」を意味します)」を定めています。クレドブックは、会社の考え方・価値観・行動規範(総じて“マインド”と呼んでいます)をまとめた冊子で、社員全員が保有しています。会社のビジョンやミッション、80個近くあるマインドなどが記載されています。
当時の朝礼では、ミッションを唱和し、朝礼当番がクレドブックのマインド(会社の考え方・価値観・行動規範)の中から自由に選んだテーマをもとに2分間スピーチを行います。スピーチがあるので、当番になった社員は話す内容を考える、マインドをより理解しようとします。また、会社の考え方や行動規範に関することを扱うため、朝礼自体がより重要な位置づけとして捉えられるようになります。
一方、問題点として、朝礼当番がスピーチするテーマを自由に選ぶので、話しやすいものに偏る傾向にありました。周りの参加者も、うわの空で聞いているだけなので、そのスピーチからどれだけ気づきや学びを得られているのかが疑問でした。また、マインドへの理解がずれていても、一方的に行うスピーチ形式では、その場で訂正できないといったことが起きていました。
ディスカッションを取り入れた、新しい朝礼スタイルへ
こういった問題点を解消するために、2020年よりスピーチではなくディスカッション形式を導入しました。これまで通りミッションの唱和と連絡事項の共有を行った後、「マインドのディスカッション」と題して、毎日1つのマインドをテーマに10~15分ほど、全社員で話し合います。これまでは朝礼当番が自由に選んでいましたが、クレドブックの掲載順に行うことで、漏れや偏りをなくします。加えて、ビジョン、ミッションなどの“理念”の部分もディスカッションのテーマとして扱うようになりました。
1つのマインドについて意見交換し話し合うので、これまで以上に理解を深めることができるようになりました。解釈違いがあればその場で訂正することができ、分からない時にすぐ聞けることは大きなメリットとなっています。先輩社員の成功・失敗体験を共有することで疑似体験ができ、何が良くて、何が悪いのかが具体的に分かるようになり、新人・若手社員の教育の場にもなりました。また、全員にアウトプットする機会があるので、スピーチの時のような参加者がうわの空になってしまう状態を防ぎます。
“静まる場”を打開。ディスカッションを活性化させる工夫
いきなり大人数でディスカッションとなっても、最初から上手くいくものではありませんでした。ファシリテーションを行う朝礼当番が質問を投げかけても、誰も発言できず静まりかえったり、ディスカッションではなく自分の意見を順々に発表するだけになったり、論点があちこち飛んでまとまらなかったり…。そこで、議論や意見交換ができるように、次のような工夫をして活性化するための試行錯誤をしていきました。
・事前準備をして考えをまとめておく
・ファシリテーターが名指しで意見を求める
・会話形式でラフな雰囲気で行う
・恥ずかしい失敗談を歓迎する
・「なぜ?」「どうして?」の視点で質問する
・良い発言や議論を活性化した人に「ベスト発言賞」を贈る
全体の理解度が上がり少人数でのディスカッションへ
このようなディスカッション形式の朝礼を始めて1年以上が経過すると、社員のマインドの理解度があがり、解釈間違いも社員同士で訂正できるようになりました。一方で、参加人数が25名以上にもなると発言するメンバーとそうでないメンバーに二分していく傾向も見られました。そこで、ディスカッションの時には2つのグループに分かれて行うようにしました。少人数になれば話しやすくもなり、アウトプットの機会が増え、議論もより活性化します。時間も短縮することができるようになりました。
<現在の朝礼の進行>
①ミッションの唱和(※毎週月曜はビジョンを唱和)
②連絡事項の共有
③各プロジェクトのウィークリー目標の進捗発表
④マインドのディスカッション(2グループに分かれる)
毎日の積み重ねが強い組織をつくる
経営理念や会社の考え方・価値観は、単発的な研修ではなかなか伝わるものではありません。イーバリューの場合はクレドブックですが、一般的にどの企業にもある社是・社訓を掲げているだけでは、意味がありません。日々、会社の方針や考え方に触れ続け、自分の頭で考えることで理念は浸透します。私たちはその機会を毎日の「朝礼」で担うことができると考えています。あるべき考え方やマインドがセットされた状態で仕事ができれば、パフォーマンスもアップします。
最近では「古い」「ムダ」とも言われている朝礼ですが、会社と社員が同じ方向を向き、理念や価値観を共有した強い組織をつくるための貴重な場として活用することは、工夫次第で十分にできると考えています。働き方が多様化する今だからこそ、以前からある「朝礼」に意義や目的をしっかり持たせることで、社員の意識を変えるものへと繋げていってはいかがでしょうか?